【大学教授に聞いてみたVol.01】自然体験は子供にとってどういう効果があるの?
写真:びわ湖成蹊スポーツ大学 中野友博教授(BSCの浜辺で)
こんにちは、琵琶湖の自然体験施設BSCウォータースポーツセンターのキャンプディレクターのたつやです。
BSCの小学生キャンプは、ウォータースポーツや、釣り、魚とり、川遊びなど、琵琶湖の自然を思いっきり楽しみます。
多くの人が、子供達にとって自然体験は教育的に意義のあるものだと考えられているでしょう。
実際に、自然体験が子供達にとってどういう効果があるのか、野外教育などの分野を専門とされている大学教授に聞いてみました。
目次
自然体験、野外教育のプロに聞いてみた
今回は、地元滋賀県にあるびわこ成蹊スポーツ大学の副学長の中野友博教授に色々お話を伺いました。
中野先生は、野外教育、野外スポーツ、冒険教育、環境教育が専門。夏休みには地元の子供たちを集めたちびっこキャンプの運営もされています。
*びわこ成蹊スポーツ大学*
びわこ成蹊スポーツ大学は、新しいスポーツ文化の創造のための教育研究に努め、日々のスポーツや健康に関するニーズに応えられるよう、スポーツを開発し、支援することのできる豊かな教養と高度な専門性を有する人材を育成する大学として、滋賀県大津市にございます。
※大学HPより抜粋
大学公式サイトはこちら。https://biwako-seikei.jp/
*中野友博*
筑波大学大学院修士課程体育学研究科修了、修士(体育学)
びわこ成蹊スポーツ大学副学長・スポーツ学部長
学生時代はワンダーフォーゲル部に所属し、国内の山でトレッキングを楽しむ。
野外活動、キャンプ、自然体験活動の運営や指導、及び指導者養成(日本キャンプ協会やCONE、自然の家ボランティアリーダー等)に関わる。
※大学HPより抜粋
自然体験が子供に与える効果は6つ
中野先生は、教育としての自然体験活動を専門に研究、人材の育成に励まれていますが、実際のところ、子供時代の自然体験ってどういう効果があるんでしょうか。
①達成動機の向上
簡単に言うと、やる気が身につくということです。
日々の習い事であったり、スポーツ、学校の勉強に対してやる気を持って挑む力が身に付くと言えます。
②有能感の向上
自分に対して、自信がつく。
新しいことに挑戦しようとするとき、必要になってくるのが自分への自信。
自然体験の中で、難しいことが自分なりにできたという経験により、自信が身につくのでしょう。
③自律心の向上
自分を律する力ですね。がまんと責任感が身につくとも言い換えられます。
小学生に身近な例でいうと、宿題を提出期限までにきっちり終わらせて提出するとか、約束を破らなくなるといった力が身につくと考えられています。
④他者受容感・凝集性の向上
難しい言葉ですね。
他者受容というのは、他の人の考えや立場を理解して受け入れてあげるという意味があります。
友達の立場に立って、物事を考えたりなど。
凝集性とは、チームでのまとまりをつくる力といった意味合いがあります。
⑤自己決定感の向上
物事を、自分で判断し、決定できる力です。
大人になっても、物事を自分で決めるには勇気がいりますよね。
子供のうちから自分で判断し、決めていくという経験を、自然体験の中で繰り返すことによって、その力が身についていくようです。
⑥自然意識・感性の向上
自然への気づき、理解、保護の精神が身につくということ。
体験の中で、自然を肌で感じ、自分なりの価値観が生まれます。
研究の中でキャンプなどの自然体験が、子供達に対して多くのプラスの効果を与えることがわかりました。
自然体験は、人の長期的な成長と関係している
中野先生と話していて、「結局いろいろ言われてるけど、自然体験の効果って短期的に得られるものですかねー?」という話になりました。
正直、自然体験をしたから、学校の成績が急に良くなる訳でもないし、急にコミュニケーション能力がめちゃくちゃ上がる訳でもない。
短期的に、目に見える形での変化を、過度に期待するのは気をつけなければならないのでは?
2010年に、国立青少年教育振興機構が、20~60代の成人5,000人を対象に行なった調査。
大人に対して、昔のこと思い出してよーっていう調査。
子供の頃自然体験をたくさん経験していると、意欲・関心が高い大人になる?
2010年に行われた「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」は、幼児〜中学3年生までの間の様々な体験と、それを通じて得られる資質・能力の関係性を把握し、どの年齢期にどういった体験が重要になるかを明らかにすることを目的に行われた。
意欲・関心に関する調査
実際に成人に対して行われた質問は多くありますが、そのうち「意欲・関心」に関する質問とその集計結果が、子供時代の自然体験の有無や数に大きく関わりがあったのでご紹介します。
- もっと深く学んでみたいことがある
- なんでも最後までやりとげたい
- わからないことはそのままにしないで調べたい
- いろいろな国に行ってみたい
- 経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい
これらの質問の回答をまとめ、意欲・関心のあるなしを分類。
自然体験を子供時代、どれだけやってきたかも調査し、この2つを掛け合わせて集計すると下のグラフのようになりました。
自然体験を多く経験した人が、経験が少ない人よりも、意欲・関心がある人の割合が2倍以上も多くなっていますね。
意欲・関心がある成人は、子供時代に自然体験を多く経験している傾向にあるというのが、わかりやすく出ています。
大人に成長した後の調査ということもあり、長期的にみて子供時代の自然体験は人々の成長に影響を与えていると言えそうです。
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キャンプ後の保護者の声
中野先生も、夏休みに地元滋賀県の幼児、小学生を集めた「ちびっこキャンプ」を運営されていますけど、子供たちの様子や、保護者の方の反応はいかがですか?
例えば、家の手伝いをするようになったか?とか、生活態度に改善はみられたか?とか。
結果として、参加前に比べてお手伝いはするようになるし、生活態度も改善していると回答してもらっています。
BSCの場合、アンケート調査はしていませんが、キャンプの集合や解散の時に保護者の方とお話しすると、「玄関で靴を揃えるようになってびっくりした」とか、「食器片付けるようになった」とか教えてくださることもありますね。
参加直後はけっこうそういう傾向にあるんですが、時間が経つにつれお手伝いとかしなくなっていきます。笑
やっぱり。笑
大人でもそうですよね。
自己啓発本とか読んで、その時はめちゃくちゃやる気出るんですが、3日くらい経つと元の生活に戻ってるとか。
僕もそういうことを繰り返してます。
でも、またキャンプに参加すれば、またやる気を取り戻すんですよね。
繰り返していくことが重要。
同じキャンプを経験しているから、初回時よりも自信を持って参加してくれますしね。
前回の参加は年長の時で2年ぶり。
試しに年長の子達だけの班に入れてみたんだけどね。
どうでしたか?
その、下の年齢の子の面倒をみてあげるっていうのも、一つの貴重な経験になっているでしょうね。
で、その経験でまた自分に自信がついていく・・・。いい流れですね。
子供たちの自然体験の機会は増えているが?
最近の子供達は、ゲームにスマホといった室内での遊びがかなり揃ってますよね。
30歳の私ですら、小学生時代、ゲーム世代って言われてましたし。
外で遊んでいる子供は明らかに減ってますよね?
実際のところ、子供たちが自然に触れる機会は減っているんでしょうか?
90年後半頃から、文部省が子供達に自然体験させよう!ってなって、民間の自然学校も増えましたね。
たつやさんも、小学校の時30泊のサマーキャンプ行ってたでしょ。
あの時期くらいから自然体験を提供するところが増えたね
30泊31日サマーキャンプ、懐かしい。
小学4年、5年(1999年、2000年)の夏休みに2回行きました。
山登りを3泊4日でやったりとかしてましたね。
期間が長くて、最後の1週間は親の顔忘れてましたもん。
昔のように普段の遊びとして自然体験するというよりかは、自然学校とかで体験ができるようになったから、少し前に比べると2000年以降の方が自然体験の機会は増えているんですね。
キャンプや体験サービスを使い分ける
今回は、自然体験が子供にどういう影響があるのかを中心にご紹介しました。
自然体験をメインにしているキャンプは、全国に多くあります。
キャンプでなくても、自然に触れる機会は一昔前に比べて多くなっているようです。
お子さんが参加したい!という気持ちはもちろん大事です。
それに加えて保護者の方がお子さんにどう成長をして欲しいかも考えてみましょう。
その目的に応じて参加するキャンプや、家族で遊びに行く場所を選ばれるのが良いかと思います。
自然体験キャンプだけでなく、子供時代のたくさんの経験が人生を豊かにするのはまぎれもない事実だと思います。
その選択肢の一つとして、BSCの小学生キャンプをご検討いただければうれしいです。