10歳の壁とは?子供の成長に合わせて親自身が変わっていくために

「10歳の壁」という言葉を聞いたことがありますか?

10歳前後は、低学年の頃は「自分は何でもできる」という万能感にあふれていた子供が、できないことがあることを自覚したり、他人との違いを認識したりすることで変化が表れる時期です。
「10歳の壁」に突き当たった我が子への接し方に悩む親も少なくありません。

「10歳の壁」とはどのようなものなのか、親ができる対応方法などを紹介していきます。

10歳の壁とは?概要と原因

「10歳の壁」とは、幼少期から思春期に移行する間の成長によって起こる、つまずきや反抗的な態度のこと

学習面でのつまずきや体力面での個人差が大きくなることなどから、他人と比較することで劣等感を感じて自己評価が低下したり、ネガティブな気持ちに陥ったり、攻撃的な態度になったりすることをいいます。

「10歳の壁」が起こる主な原因
  • 体力面・学力面で同級生と差が出てくる
  • 日常体験以外の抽象的な概念が増える
  • 考える力と伝える力のギャップ
  • 親の教え方が適切ではない

なお、「10歳の壁」は小学校4年生頃で起こりやすいことから、「9歳の壁」や「小4の壁」とも呼ばれます。
また、「10歳の壁」が注目されるようになったのは、2009年に
NHKの『クローズアップ現代+』で取り上げられたことがきっかけとされています。

体力面・学力面で同級生と差が出てくる

10歳頃は体力面や学力面で同級生との差が出てくる時期です。

小学校4年生頃になると、身長などの体格差が出てきて、成長の差が大きく開いてきます。
そうした身体的な変化が影響し、運動能力の差も顕著となります。

また、自分を客観的に見る能力も芽生えてくることからも、同級生と比較して運動が「できる・できない」を自覚するようになるのです。

学力面においても同様です。
小学校低学年での学習が不十分な子供は、中学年になると学力の低さが目につきやすくなります。
なかでも差が出やすいのは算数で、繰り上がりのある足し算や九九をきちんと習得していないと、中学年になって習った範囲でも正答するのが難しくなってしまいます。

また、同級生よりも勉強ができないことを意識するとますます意欲を失い、さらに学習から遠のいてしまうのです。

日常体験以外の抽象的な概念が増える

小学校4年生になると算数でつまずく子供が多いのは、日常体験とは異なる抽象的な概念が増えることも理由のひとつです。

1年生で学ぶ算数はシンプルな足し算や引き算で、「でんせんにすずめが8わとまっています。4わとんできたら、ぜんぶでなんわになったでしょうか?」といった、状況を具体的にイメージしやすいものです。

しかし、4年生になって学習するのは、四捨五入などの「がい数」や2つの数の関係による「変わり方」「角度」「面積」といった内容になり、具体的なイメージを抱きにくくなります。
また、計算問題では小数点のある計算が出てくるため、「8.25 -0.145」といった桁数が違う計算では、どこに小数をつけるのかわからなくなるといったことが起こります。

日常生活では経験しない、頭の中でイメージしにくいことを学ぶようになるため、授業を聞いてすぐ理解できず、つまずきの原因となってしまうことがあるのです。

考える力と伝える力のギャップ

求められる読解力や言語力が伴なわないことも、「10歳の壁」に突き当たる原因になります。

読解力や言語力が育っていないことには、さまざまな要因が考えられます。

  • 暗記やスピードを重視した学習ばかりしていること
  • 読書をする機会が少ないこと
  • 親とのコミュニケーションが少ないこと

その結果、算数の計算問題はできるけれども文章問題は解けない、教科書の文章やテストの問題文の意味がわからないといったことが起こります。
読解力や言語力は一朝一夕で身につくものではないことから、それまでの環境による差が大きくなっていくのです。

親の教え方が適切ではない

小学校低学年と高学年では勉強方法が変わるにも関わらず、同じように接してしまうことも「10歳の壁」を感じる原因です。

小学校4年生以降の勉強では、それまでの学習範囲を理解していなければ、わからないことが増えてきます。
そのため、本人の理解に合わせて学年を遡って復習が必要になることもあります。

理解ができていない状態で詰め込もうとすると、勉強が嫌いになってしまいかねません。
親は子供に
「できる」という自己肯定感を与えることが大切です。

 

10歳の壁への対応方法

「10歳の壁」へ親が対応するために、具体的なアクションを考えていきましょう。

  • 学習内容を日常生活とつなげる
  • タブレット学習を取り入れる
  • 本を読む機会を増やす
  • 一方的に親の考えを押しつけない

学習内容を日常生活とつなげる

小学校4年生になると、抽象的な概念を学ぶことが増えてくるとはいえ、日常生活に結びつけられることもあります

たとえば、算数の「がい数」はおおよその数について学ぶものですが、スーパーには「98円」や「198円」といった金額の品物が多く並んでいます。
そこで、「98円のものを5つ買うといくら?」と子供に聞いてみましょう。

「98円のものを5つ」と考えると計算が難しいですが、「100円のものを5つ」として考えると、だいたいいくらになるかわかりやすいということを説明すると、がい数の概念を理解しやすくなります。

同様に、「分数」「小数」「割合」なども日常生活の中で結びつけて説明すると、子供は理解しやすくなります。
学習予定を把握して、日常生活の中で学んでいけるような工夫を採り入れていきましょう。

タブレット学習を取り入れる

子供の学習レベルに合わせて親が教材を用意して取り組ませようとしても、低学年のドリルをやることに抵抗を示すことも考えられます。
そこで、学習レベルに合わせた内容を学ぶサポートとなるのがタブレット学習です。

学習用タブレットによる違いもありますが、〇つけをしなくても正誤が表示されます。
学習レベルに合わせて、
苦手な分野を繰り返し学んでいくことができますし、反対に勉強が得意な子は先取り学習をすることも可能です。

本を読む機会を増やす

子供が考える力や伝える力を身につけるには言語能力を向上させることが欠かせませんが、日常生活の中ですぐに身につくものではありません。
本を読んで多くの言葉に触れることで、語彙力は身についていくものです。

そこで、子供が読書に興味を持つようにするには、親自身が読書を楽しむことがおすすめです。
子供に読ませたい本を読むのではなく、親自身が読みたい本を読むようにします。
また、電子書籍ではなく、紙の本を読むようにして、親子で本屋で本を選び、子供が興味を持った本を買う機会を作るようにしましょう。

一方的に親の考えを押しつけない

10歳頃になると、親が正しいと思うことを一方的に押しつけようとしても子供が反発することがあります。
成長に伴ったリアルな教育でなければ、子供の心に響かなくなってきているためです。

そのため、単に「○○しなさい」と正論をいうのではなく、「なぜ」しなければならないのか、理由を伝えることが大切です。
時には子供自身に調べさせることによって、考える力を身につけることにもつながります。

発達障害や反抗期なのか悩む前に

発達障害の子供は自尊心が育っていないことが多く、また十分な愛情を受けて育っていないことで発達障害に似た症状が出ることもあります。
自尊心を養うには、
悪いことを叱ってばかりいるのではなく、よいことをしたときに褒めるようにしましょう。

10歳頃の子供は頭ごなしに叱ると反抗的な態度をとり始める時期でもあります。
そのため、発達障害や反抗期なのか悩む前に、
親自身に問題がないか振り返ってみることが大切です。

ただし、発達障害の場合は適切な支援にもとづいたサポートを行うことが必要となるため、医療機関や学校のスクールカウンセラーに相談しましょう。

男の子と女の子による成長の違い

「10歳の壁」は男の子と女の子による違いもあります。

一般的に女の子の方が成長は早く、論理的に話したり、自分から勉強に取り組んだりする子供もいます。
一方、男の子はそれまで親にベッタリだったのが、そっけない態度をとるようになったり、反抗的な態度をとったりする傾向が見られます。

10歳になったら子供とのコミュニケーションをより意識しよう

子供が「10歳の壁」に突き当たったと感じる時期がきたら、親は戸惑ってしまうかもしれません。

しかし、これは大人への成長過程のひとつです。
子供とのコミュニケーションのとり方の見直しを意識して、温かく見守ることも大切です。

自己肯定感を損なうことのないよう、子供の繊細な気持ちに寄り添ってあげましょう。

CONTACT 掲載に関するお問い合わせ

まなびち公式SNS