アウトドアを仕事に。子供と自然をつなげるために必要なこととは?|大阪ECO動物海洋専門学校
自然体験やアウトドアスポーツの情報発信をしている『まなびち』では、自然に関わる仕事人や、その勉強ができる学校への取材を通して、日本中の子供たちに、より『自然体験』を身近に感じてもらうウェブ連載を行なっていきます。
今回はその第1弾。
お話を伺ったのは、動物、自然環境に関わる職業、アウトドアスポーツの人材を育成する「大阪ECO動物海洋専門学校」さんです。
2022年4月に新たに誕生する「グリーンライフアドベンチャー専攻(2023年度よりECOアドベンチャーツーリズム専攻)」は、全国的にも数少ない、アウトドアインストラクターなどのプロフェッショナル人材を育てるコースです。
今回は、水中写真家・ダイビングインストラクターである、「大阪ECO動物海洋専門学校」の城者(じょうしゃ)先生にお話を伺います!
大阪市にある、動物・海洋⽣物・ペット・⾃然系学科など計12の専攻から、その道の職業人を育てる専門学校。
2022年4月には、4年制の「グリーンライフアドベンチャー専攻(2023年度よりECOアドベンチャーツーリズム専攻)」、「動物園・水族館&テクノロジー専攻」を新設。
大阪ECO動物海洋専門学校
所在地:〒550-0013 大阪市西区新町1-32-1
HP:https://www.osaka-eco.ac.jp/
目次
これからアウトドアアクティビティはどんどん盛り上がっていく
現在は大阪ECO 動物海洋専門学校の教務副部長として、海や環境再生に関するさまざまなプロジェクトを企画し、人と自然を繋ぐ授業を担当する。
大阪ECO動物海洋専門学校HPより
自身も小学生時代、夏休みに親元を離れて30泊31日のアウトドアキャンプに2度参加したり、けっこう自然体験していた子供だった。
*初めまして城者先生。新しく誕生する「グリーンライフアドベンチャー専攻(2023年度よりECOアドベンチャーツーリズム専攻)」ではアウトドアインストラクター人材の育成も行なっていくということで、『まなびち』として、どうしてもお話を聞きたかったんです!
*いきなりですが、なぜ「グリーンライフアドベンチャー専攻(2023年度よりECOアドベンチャーツーリズム専攻)」を新設することになったんですか?
実は、以前からこの学校では、自然環境に関わる人材育成を行ってきました。
たとえば、「野生動物&環境保護専攻」や「海洋生物保護専攻」などです。
ただ、真正面から自然環境を保全する仕事以外にも、一般のみなさんや、子供たちに自然の魅力を伝えるために、アウトドアインストラクターとして、自然学校や、森のようちえんに就職したい学生も多かったんですよ。
*森のようちえんや森の小学校といった、自然体験に重きを置いた子供向けのサービスは増えてきていますしね。
*学生が卒業後に働く現場を考えて、専攻を作ったということですか。
2019年まで、多くの外国人観光客が日本を訪れていましたよね。
観光地巡りや買い物だけでなく、日本の自然を楽しめるアウトドアアクティビティやエコツーリズムも人気になりつつありました。
日本人もここ数年のキャンプ人気もあいまって、野外アクティビティを楽しむ人の数も増え、今後も業界全体がどんどん盛り上がっていくと考えています。
そのため、専門的な人材の育成が長期的に見て必要なのではないかというのも、新設の理由です。
*なるほど。たしかに野外アクティビティって、開放感もあるし、競技スポーツと違って年齢を気にせず長く楽しめるところが魅力ですよね。
家にこもることが多かったこの2年の間で、みなさん、その魅力に気づいてきたのではないでしょうか。
しかも、日本ってやはり自然が豊かで、魅力的なんですよね。
なので、今後それを楽しみたい人たちが増えていき、そのサービスの担い手もどんどん必要になっていくと考えています。
基礎と実践の4年間
写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
*そういえば、専門学校ってだいたい2年で卒業のイメージがありますが、この専攻は4年で卒業ですよね?
なんで4年間なんですか?
なぜか。ざっくりいうと「今後必要とされる、この分野のプロフェッショナルになりうる人材を育てるには、4年は必要だから」です。
*4年間かけないと、学生の身にならないということでしょうか?
- 企業家学習による企画力・創造力
- 経営的なスキルの習得
- 実践の積み重ね
*教育という観点だけでなく、サービスとして自然体験や野外アクティビティを提供するとなった場合、たしかにビジネス的な感覚が無いといけませんね。
写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
*経営に関わる知識や考え方を学ぶのはとても大事ですね。ですが、学生時代にそういう視点を持つ機会は、そうそう多くないと思います。
*私もそうでした。
なので、そうならないように、そこもしっかりと学んでいきます。
そして、その知識を実践して、自分のものにしてもらうために4年間という時間が必要なんです。
そのための仕組みもあるので。
*その仕組みって具体的にはどういうものですか?
これは長い間、企業様の協力のもと培ってきた我々の教育の強みでもあります。
「企業プロジェクト」で、実際の企業課題に挑む
イリオモテヤマネコ保護活動|写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
大阪ECO動物海洋専門学校では、水族館や動物園、出版社など企業、大学と協力しながら、学生が現場を学ぶための「企業プロジェクト」を多数実施。
業界の企業、施設から課題や要請をいただき、プロと共にその行程や現場を体験するのが「企業プロジェクト」。
ショーの企画やイベント運営、商品企画、環境調査など、その課題はさまざま。コミュニケーション力やプレゼンテーション力など、社会人として必要な実践力を身につけます。
引用:大阪ECO動物海洋専門学校
実際にその企業が抱える経営課題、例えば、「季節によって来てくれるお客さんの人数が変わって、暇な時期がある」という課題があったとします。
その課題を解決するために、学生と企業が、ワークショップや実地調査を行い、新たなサービスを考案。
実際に企業に採用されたアイデアもあり、学生たちのモチベーションも上がり、実践として経験値を積む役割を担っている。
普段の勉強とリアルな社会をつなげる企業プロジェクト
「普段勉強していることが、実際のビジネスにどういう風に繋がっているのか」を学生たちに、自分の体験から知ってもらうのが企業プロジェクトのポイント。
いかにお客さんの求めているモノ(ニーズ)を考え、それを叶えるサービスをデザインできるか、自然体験や野外アクティビティの現場(社会人になればどこでも)では、そういう力が必要です。
*お話を聞いていると、体だけではなく、けっこう頭を使うことが多そうですね!
*大変そうですが、自分の身になっていくのが実感できると楽しいでしょうね!
サービス名を変えるだけで、その価値は何倍にもなる
自然体験や野外アクティビティは、教育上の観点で語られることが多いです。
ですが、お堅いイメージになってしまうと、なかなか子供達に届きません。
教育ではなく、エンタメとして自然体験を捉えると、いろんなアイデアが湧いてくると思うんですね。
より多くの子供達と親御さんに、自然の素晴らしさや、楽しさを知ってもらうためのきっかけを作るには、考えることはたくさんあります。
サービス名をどうするか、どういう体験をしてもらうか、どういう風に告知するかなど。
アクティビティの内容は同じでも、サービス名を変えただけで、来てくれるお客さんの数がめちゃくちゃ増えたなんて事例はたくさんあります。
そういうアイデアが出せる人材が今後、どんどん活躍していけると我々は考えています。
自然体験は子供達の危機管理能力を育てる
写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
*城者先生、いきなりですけど、子ども達が自然体験や野外アクティビティを経験すると、いいことってあるんですか?
どこまで行ったら、やったら、怪我をするのか、逆にどのあたりまでは比較的安全なのか、というラインを自分の体で知ることが大事です。
そういう経験を繰り返して、危機管理能力が培われるのではないかと思うんですよ。
*普段の生活だと、車道の真ん中を歩くことのリスクは、子ども達でもわかりますもんね。車が身近にあって、そのスピードを間近で見ているから、本能的に危険と認識できてるのでしょうか。
水辺のスポーツやアクティビティは、リスクが高いというイメージです。
そのイメージは間違っていないのですが、だからといって子供達が近づけないようにしてしまうのは、長期的に見ると少しリスクがあるかもしれないですね。
水辺の場合、ライフジャケットを正しく着用すること、天気や水の流れ、波の高さなど状況を見て、危険かどうか判断する目を養わなければなりません。
サバイバルキャンプ実習|写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
*それを教えるのは、保護者の方もなかなか難しいのではないでしょうか。
*なるほど。
普段の生活から離れて、自然のなかで遊ぶことで、リスク管理の力が備わっていく。これが自然体験やアウトドアアクティビティを子供のうちから経験することの意義の1つなんですね。
環境問題の解決は、身近な自然を楽しまないと進まない
写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
*あともう1点質問です。
地球の環境問題についてずっと議論されていますよね。SDGsの中にもそういう目標があります。
子ども達が自然環境の問題に対して、より自分ごと化するためにはどうすればいいんでしょう?
まずは、身近にある小さな自然に触れることが始まりでしょうね。
たとえば、水辺の話ですが、海外や、沖縄の海で遊んでも、それはただの観光としての思い出なんですね。
*なるほど。
毎日見ていると、その環境の変化に気づけるんですよ。
なんか、今日川の水が少ないなーとか、木が減ってる!とか、ゴミめっちゃ落ちてんじゃんとか。
英虞湾(あごわん)アップサイクルプロジェクト
三重県伊勢志摩にある間崎島で、問題となっている、廃棄されたままの漁具や、使われなくなった養殖真珠用の筏の回収・解体を行うアップサイクルプロジェクト。
使われなくなったボートも、また新たに使えるよう修繕し、次の世代にとって魅力的なまちづくりを行うプロジェクトだそう。
間崎島には、漁師の高齢化により適切に処理することが出来ず、海上に放置されている養殖用のイカダがいくつもあります。
明確に定められた破棄方法は無く、今回は素材ごとにバラして処理を行います。
引用:大阪ECO動物海洋専門学校
問題となっている放置漁具の回収|写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
放置筏の解体|写真提供:大阪ECO動物海洋専門学校
*あー、地元の環境については、意外と見ていないかもしれないですね。
遠くの国の状況は、テレビやネットで見る機会は多いですけど、地元の自然がどうなっているかは、自分で見る以外に知る機会って実は無いんですよね。
なので、とにかく家族で地元の自然にたくさん触れて、まずは地元の環境問題について考えていくという流れを作らないと、子供達は自分ごととして環境問題を考えなくなるんじゃないかと思います。
*地元の小さい池とか、山に行って、小さな発見をしていくのが、まずは大事ということですね!
日本はけっこう身近に自然があるので、家族で遊びに行くと保護者にも何か発見があるかもしれないですね。
ありがとうございました!!
まとめ
今回は、大阪ECO動物海洋専門学校の「グリーンライフアドベンチャー専攻(2023年度よりECOアドベンチャーツーリズム専攻)」についてお話を伺いました。
ここから、人と自然を繋げてくれる人たちがどんどんうまれてくるのがとても楽しみになりました。
また、城者先生から、子どもと自然体験について、たくさんのお話を聞かせていただきました。
アウトドアスポーツ、アクティビティは自然がフィールドになります。
リスクをしっかり知り、それを回避するための準備や、行動をすれば、普段経験できないような楽しみが待っています!
大阪市にある、動物・海洋⽣物・ペット・⾃然系学科など計12の専攻から、その道の職業人を育てる専門学校。
2022年4月には、4年制の「グリーンライフアドベンチャー専攻(2023年度よりECOアドベンチャーツーリズム専攻)」、「動物園・水族館&テクノロジー専攻」を新設。
所在地:〒550-0013 大阪市西区新町1-32-1
HP:https://www.osaka-eco.ac.jp/